その他所感(2)

最後3公演を見ての追加

 

ダンスや音楽がグレードアップしてた。トムとキティが一緒に踊る場面は、くるくる回ったりして、あ、トムさんダンス大会で2位?でしたもんね、さすがですね、っていうぐらい踊ってた。ジョーに魅かれていたキティが、まぁトムでいっか(←失礼)ってなる瞬間が分かって楽しかった。ハリーもさらにノビノビと楽しんでいた感じ。

 

2階から見てやっと気付いたのが、キットが初めて入店してきたとき、ニックがすっっっごく警戒してるんですね。ジョーは最初から様子見してて。話すうちに他のみんなはどんどん緩んでくるんだけど、ニックはずっと警戒してて、ジョーがどんな風に判断するのかを見てる感じ。ニックもジョーを信頼してるんだな、と思った。最初からこんなんだったっけ?

 

A席で1回だけ観られたのだけど、役者さんたちの導線が丸見えだし、なんかいろいろやってるのも観えるし、双眼鏡で観ててもさほど罪悪感を感じなくてすむし、なかなかよかったです。表情見たい時は、やっぱり前の方がいいけどね。

 

ガム噛み合戦が、唯一の遊べるシーンみたいになってた。平気で嘘をつくジョーがかわいかった。

 

キティの娼婦度が上がっていた。ずっとキティも捉えどころがなく、現実感が薄くて純粋な少女の側面が強く出ていて、あまり売春婦って感じがしなかったんだけど。まぁそれが狙いなのかなとも思っていて。でも売春婦と純粋な少女の間で綱渡りしている感が強くなっていたかな。

 

ハンカチ芸!?いつの間に??

 

マッカーシー役の人はよく見たら子犬みたいな可愛らしい顔してるのに、港湾労働者?で活動家なんて役なもんだから無精ひげはやして小汚くなってるのが微笑ましかった。

 

中山さん、坂本さんとしゃべれない中山さん...

 

ニックのママン、会話の中でモッツァレ~~ラだけ耳が拾うのでそのたびに笑ってしまう。あ~、今日の夕飯の話ですかね??みたいな。

 

それぞれ回を重ねるごとにいろいろ間の取り方とか抑揚の付け方とか少しずつ変化しているのに、ブリックはほぼ変わらなかったね。変えようがないんだろうけど。なんか、さすがブリックって感じ。悪役全うしました!っていう一種の清々しさを感じました。

 

そういやトムもあんまり変わった印象がないなぁ。アニキがあれだけ変わってから変わらないはずないような気もするけど。

 

新聞売りの少年は相変わらずよかった。

 

最後、ジョーが出て行った時、ニックと新聞売りの子だけがず~っとジョーの方を見てて、寂しいね、寂しいね、ってなりました。

 

坂本さんがキレキレでかっこよかった。かっこよかった。かっこよかった。

 

以上です。

 

それにしたって同じセリフしゃべってるのに、こんなに違うし想像も膨らむし、目線、表情、仕草、体全部を使ってすごい情報量を発しているんだなぁと思いました。坂本ジョーの、あの座り込んだ時の死んだ魚みたいな生気のない眼、ブリックを睨むときの鋭い眼、トムに向けるお前バカだなぁっていう優しい眼、ニックと顔を見合わせる時の合図を送るような眼、全部から感情が伝わってくる。すごいなぁ。

この経験が、坂本昌行さんのどんな未来につながるのか、楽しみにしています。次の舞台はなんだ~~~~、教えろ~~~。

広告を非表示にする

ジョーの変化(2)

7月1日、2日の3公演を観劇してきました。

ジョーは以前観たジョーとはまったくと言っていいほど違っていたし、作品全体の雰囲気も違っていました。ここが着地点かと少々予想外ではありましたが(そもそもスナフキンイメージに翻弄されていたシロートの予想なんてホントどうでもいい)、カチッとピースがはまったような感じと、舞台の熱量と、眼光鋭いしびれるほどかっこいいジョーを堪能してきました。

感想なんて個人の財産です。人それぞれ異なるので晒す意味があるのか考えたりもしますが、私個人は人の感想を読むのが楽しいので一部のそんな人に向けて。

詳しい時代考証や作者の背景などは加味していません。作品の楽しみ方は個々人特有のものがあると思いますが、自分の場合理解したいのは自分の目で観て感じた作品で、必ずしも原作ではないのかな。というか知識も考察力もないので感じる以外の方法を持たない。そんなわけで先入観なく感じたままを大切にしたいなぁと。(とは言え背景の理解があれば別の見方もできるし、オリジナルの意図も気になるので、それはまた別途。)

 

7月1日のジョー

「ア…アニキ...」と言うのが最初の感想。以前観劇した時に感じた仄暗い背景や鬱屈した感情は見えず、勢いがあって、子供っぽくて、茶目っ気もあって、気まぐれで衝動的なアニキ。おそらく頼りになる。間違いなく下流の出自で、ギャンブルで一発当てた金で成り上がったアニキ。教育は受けていないだろう。仕事もまぁ本当にしてないんじゃないかな。気障で粗野で、女性にだって気軽に声をかける。酒場の人達やトムに対する愛情、ニックに対する信頼が見て取れた気がした。(これは以前、そこまで強くは感じなかった部分。)

以前感じた憂いも孤独も葛藤も影を潜め、酒場での日常を楽しんでいた。酒場の片隅でひとり浮いていたジョーが、この日は酒場の常連として仲間の一人になっていた。セリフの言い方にも思わせぶりな所が少なくなり、そのまま受け取ればいいような。

舞台全体の印象も明るく熱量が増した。テンポもよく、一体感があり、酒場=ホームという感覚をより一層強く感じた。作品解釈の深度が削られて分かりやすくなった分、エンタメ性が強くなった気がした。

 

7月2日(千穐楽)、最後のジョー

基本的には1日のジョーと同じだけれど、さらに進化していた。めちゃくちゃかっこよかった。みとれるほどかっこよかった。(実際何度も見とれて思考停止していた。)

一番違ったのは頭がよさそうだったところ(←語彙力)。7月1日のジョーが、運だけで成り上がったギャンブラーだとしたら、世の中を見極める嗅覚の鋭い切れる男という感じ。貧しい出自により教育を受けることはできなかったが、元来の頭の良さと勘の良さに加え、実地で学んだり独学で習得したりした知識で世を渡り、有り余る金を得た。もし投資の世界に身を置いていたとするならば、相当な切れ者だと思う。ギャンブルを含め投機的金儲けの厳しさを身をもって知っているので、トムが夢みたいなチャンスについて話す時は大変にシビアな態度だった*1

金に執着はない。でも金が人を狂わすことを知っているから、ただ渡すことはしない。トムを筆頭に酒場に集まる存在を慈しみ愛おしみ、その存在を守るニックを信頼し、自分もまたそこにいる。絶対に頼りになる。危ない方面でトラブルに巻き込まれてもどうにかしてくれそう。ニックへの信頼が強く表れていたような気がする。ある意味相棒みたいな*2。少しの憂いと背景も感じられたかな、この日は。きちんと個人としてそれぞれと心を通わせていた。

1日のジョーは粗野で少し野蛮な感じすらしたけれど、この日のジョーにそんな野暮ったさは欠片もなく、眼光の鋭い、研ぎ澄まされた男がいた。この日のジョーは、どこまでも美しくて鋭くてしびれるほどかっこよかった。

舞台全体も1日と同じ感じだったけれど、さすがに千穐楽の熱量がこもっていて、一体感と迫ってくる気合いを感じた。

両日通して最も印象深かったのが、最後、酒場を出る時に帽子を胸に挨拶をする時の表情。安堵と感謝と少しの寂しさと後悔が混じったような、どこか解き放たれたような暖かな微笑み。今思い出しても涙が出そう。もちろん劇場では泣いた。

 

7回観劇した。原作も読んだ。情報センターで台本も一部読んだし、少しばかりのリサーチもしてみた。でもやっぱり分からないところが多い。特にラストシーン。

なぜブリックを殺すのはジョーではいけなかったのだろう。

失敗したジョーは操り人形の糸が切れたように座り込む。ジョーを動かす糸はなんだったのだろう。どの糸を失って心を飛ばし、どの糸を得てまた立ち上がったのだろう。

なぜジョーは、酒場を出なければならなかったのだろう。

 

1つの舞台をこんなに繰り返し見るのは初めてだった。見るたびこんなに印象が変わるものかと驚いた。見る側以上に演じる側の戸惑いも大きかったのかもしれない。試行錯誤の跡が感じ取れた。事前のインタビュー記事や原作を見る限り、今回の着地点は当初予想していたものじゃなかったんじゃないかと思ったりもする。商業演劇としてここまで揺らぎがあるのも、もしかしたら賛否両論あるのかもしれない。

でも観る側としては、毎回いろんなジョーに会えたし、舞台のいろんなところで新しい発見があった。その度に解釈も変わり、期間中ずっと楽しめた。毎回毎回、隅から隅まで、観劇した後も反芻してとてもとても楽しめた。頭の中で音楽は鳴りやまないし、タップの乾いた音や誰かのセリフが響いている。

私はとても好きでした、坂本さんのジョーも、宮田版『君が人生の時』も。

*1:これは前からかな。

*2:どこかの資料で、ニックは善良で親分肌で、腹が減って死にそうだったり金がなかったりする客や従業員に、お昼ご飯を食べさせたり酒を飲ませたり仕事を与えたりしているけれど、その金勘定に対するおおらかさを支えているのはジョーが注文するシャンパンだ、みたいなことが書かれていたので、ニックはみんなを守っているけれど、その場を経済的に守っているのはジョーなのかなぁと。

広告を非表示にする

その他所感(1)

ジョーのことばっかり難しそうに書いていますが、実際は結構気楽に楽しんでもいます。なのでいろんな雑感をつらつらと。

 

まず坂本ジョーが鼻血吹くほどかっこいい。

あのうねっとした髪型、よく似合ってますね!おしゃんで美形の文豪みたいですよね。ほんと坂本さんは、ああいう正統派の服装が信じられないほどよく似合う。ハットを被る時、今だったらもっと目深に被りそうなところを、セットした前髪が邪魔なのか、その時代のスタイルなのか、ちょこんと後頭部に乗せる感じなのもかわいいですね。

自分的ベストオブジョーの1つが、ガム噛み合戦の途中でトムにいい話する時に(キティの話相手はお前だけだみたいなところ)、ガムが邪魔なので客席とは反対側のホッペにガムを収納してぷっくら膨らんでいる愛しいホッペです。

もう1つのベストオブジョーは手の仕草。エレガント。ダンスでもお芝居でも、坂本さんの手はエレガント。キティに「君の夢は何」って話をする時に、目の前で夢を掴む仕草をするのだけれど、あのシーンがとても好き。

もう1つのベストオブジョーは上目遣い。ニックもトムも坂本さんより背が高い上に、坂本ジョーはほぼ座っているので、大体の場合において上目遣い。愛おしい。

もう1つのベストオブジョーは声。声がいい。仕方ない、声がいい。歯の浮くような(って言っていいのか分からないけど)あのセリフたちが、あの声で流れることにより、本当にもう世界の次元が変わるというか。

もう1つのベストオブジョーは歌。あの劇中のちょっとだけの歌で、坂本担はサカモトマサユキロスになると思う。舞台の上にいるのはジョーだから。そういう時はマサランドを堪能しよう。

もう1つのベスト…きりがないので次。

 

ウェスリーが秀逸。黒人の男の子の役なんだけど、ピアノはもちろん仕草とかセリフの発し方とか、センスのある人っていろんなところにセンスがあるんだなぁと思った次第。消え入るような声で「お腹が減ってる訳じゃないんです」とかとてもよかった。

メアリーとのシーンがお気に入り。なんであのシーンを入れたのかはよく分かってないんだけど(メアリーが何の象徴なのかイマイチ分からない。愛?家庭?育児疲れ???)、二人とも声がよくて上品で、上質な昔の淑女映画?を見てる気分だった。

新聞売りとのシーンがお気に入り。「サロニカだよ」って言う時の間の取り方と空気の変化がなんとも言えず好き。酒場のみんなはジョーのことが好きだけど、どこか立ち入れない壁というか、距離を感じる。新聞売りは、一歩踏み込んだ感情をジョーに抱いている感じ。実際、最後のシーンでジョーを心配して気遣っているのは新聞売りだけだった。今のところジョーの最後にはやるせない印象を持っているけど、新聞売りのあの子がいてくれたおかげで少しの救いがあるような気がしている。ちなみにサロニカ出身の何がそんなにジョーのシンパシーを呼び起こしたのかは今も不明。

タップの音。ピアノとタップを踏む音、ハーモニカ、パーカッション。最高でした。ハリーが足で床の上に円を描く時のこすれるような音が、切なくて乾いてて最高だった。(Can't Get Enoughでも足で円を描くところが好きだったので単に個人的な好みなのかもしれない。)

キットの表情。ガム噛み合戦とか、いろんな場面で、喋っていない時の顔がちょっと口を開けてニカ~~~~ッとしててキュートだった。

キットだけじゃなく、当たり前のことかもしれないんだけど、舞台上では誰がしゃべっていてもみなさんずっとその役を生きていて、そういう表情をちらっと盗み見するのも楽しかった。坂本ジョーは、キティと見つめ合ったりおもちゃで一人遊びしたり、いろんな表情をしていた。やっぱり欲しいセルフマルチアングル機能。

最後に坂本ジョーが鼻血吹くほどかっこよかった。(振り出しに戻る)

 

広告を非表示にする

ジョーの変化(1)

今回、なんだか感想の言語化にこだわっている。初回観劇時と次に観劇した時のジョーがあまりにも変わっていて、存在の概念としてはもう真逆になっていた。その衝撃が強すぎて、知識も深い考察もない稚拙で直情的な感想だけれど、自分が感じたままを覚えておきたいという欲求にかられている。

話は少しそれるけれど、そもそも自分が事前情報(ネタバレね)をなるべく避けたい理由としては、先入観なく作品そのものを自分の感覚で捉えたいから。事前情報で心や頭の準備をしてしまうのを避けたいスタイル。車に衝突することが決まっているなら、「車きてるよ危ないよ」って教えてもらうより、ドカンと吹っ飛びたい(車に衝突したい訳ではない)。最大限の衝撃を身をもって知りたい。

というわけで、原作や訳本は読まず、初日レポも避け、「若くて美しい放浪者」以外の事前情報をなるべく摂取しないで観劇したけれど、衝撃は初回ではなく次の観劇時に遅れてやってくることとなった。

以降、あくまでも主観で傾斜のかかりまくった感覚ですので、お気になさる方はどうぞここでブラウザをお閉じください。

続きを読む
広告を非表示にする

ジョーの金

ジョーの金の出所について、少しばかりの時代検証を経て自分の中での結論が固まった。なぜ、こんなにジョーの金の出所にこだわるのか。ジョーの持つ金が真っ当なものなのか、そうでないのか。それがジョーの憎しみの矛先や作品自体のトーンに大きな影響を与えると感じているからです。

 

続きを読む
広告を非表示にする

『君が人生の時』、個人的感想。

『君が人生の時』、困惑することが多くて、感想を書こうとしたらネタバレ満載だし長文だし。ということで、ここはひとつブログにでもアップしてみようということになりました。困惑と言ってもネガティブな意味ではありません。おもしろいな、なんでこうなるんだろう、という非常に昂る感じの困惑です。

困惑の原因は。まず14日の初回観劇時と19日の観劇時で、ジョーの印象が違いすぎて困惑。それに伴い作品全体のイメージも、インタビューやネット記事から得ていたイメージとは全然違うものとなり困惑。そして流れてくる感想や考察を読むと、あまりにも自分の感じた印象と違って困惑。さて、これは自分の理解力の問題なのか、それとも自分の心が汚れているのかと困惑。

「暖かな眼差しによる人間賛歌」という穏やかなイメージの中に、だいぶ反対の意見を投下するのは勇気がいるけど、とりあえず自分の印象を書き留めておこうと思います。ちなみに、原作は最初の10ページぐらいしかまだ読んでいないし、検証もリサーチもしていないので、完全なる個人の感想です。

あと盛大にネタバレしているし、本当に偏った意見だと思うので、まだ観劇していなくて先入観を持ちたくない場合はどうぞここでブラウザを閉じてください。

 

以下、主に19日ソワレを観劇した際の感想です。

続きを読む